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2009.10.11

立花隆「小林・益川理論の証明」(朝日新聞出版)

ひと言でいえば,基礎科学研究が,なぜこんなに遠くにいってしまったのだろう,である。そして,どう考えても遅すぎるノーベル賞受賞なのである。お二人とも,どことなくすでに杖に白髪ではないか。小林・益川理論が発表されたのが1973年で,CP対称性の破れとクォークが3世代あることを大胆に予言した。その時点ではほとんど無視されたというが,当時クォークが6種類あるとはだれも思っていなかった。それが,1976年には5つまで発見され,この理論を誰も疑う人はいなくなったのだそうだ。立花隆の本によると2000年までの高エネルギー物理関連の論文の引用回数として,ワインバーグの「電弱統一理論」の次に多いのが小林・益川論文になっている。クォークが3世代であることは1995年のトップクォークの発見で間違いなくなった。その理論的帰結であるCP対称性の破れも,筑波の高エネルギー研究機構のBelle実験(加速器が未知の素粒子を発見するためのものだということは知っていたが,トリスタンという加速器の限界が分かったあとの実験研究施設)によって,2001年頃にはB中間子によるCP対称性の破れが検出されたというのに。Bb

 益川さんは,ノーベル賞を受賞したとき,「大して嬉しくない」などの発言がむしろマスコミの注目を浴びた。そのへんの人柄(栄誉などに無頓着な純粋さ)が災いしたと言えなくもないが,問題なのはCP対称性の破れがどういう意味をもつのか,ということが一般に知れわたっていないことである。かく言う私も,最近まで知らなかったわけで。マスコミの報道にも問題がある。
 CP対称性の破れとは→宇宙のはじまりビッグバンのとき大きなエネルギーの中から,物質と反物質が生じた→膨張にともない物質と反物質が出会い対消滅してエネルギーになる→物質と反物質の性質が鏡のように対称性をもっていればすべてが消滅して,物質は残らないはず→星も銀河も太陽や地球は物質でできている→物質がほんのすこし残ったから→物質と反物質の性質には対称性がすこし破れていなければそれは起こらない。ということを理論づけたのが小林益川のCP対称性の破れである。ということは,小林・益川は,我々と今ある宇宙の存在の理由を理論づけたということである。こんな重大な事実が明らかになったのに,だれも大騒ぎしないし,理論の意義を世間に示さなくていいのか。私たちの宇宙がなぜあるのか,その大きな理由が科学的に解明されたというのに‥‥‥。そして,それがほとんど日本人の手によってなされたこと。はっきり言って,我々はバカじゃないのか?。
 色々とその理由を考えてみるが,教育も含めて結局世の中が,より具体性や効率を追い求めているせいだろう。養老さんの言う「脳化社会」。我々が外界をより理想化された都合の良いものだけの,いわば脳の中に住んでいるようにする癖のせいであろう。今は高校で物理を履修する生徒がほとんどいない。それで済むのかといえば,済むと考えた文科省があり世の中があるのだから,済むのであろう。ザッツオール。

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