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2013.08.26

素粒子論と宇宙の本3

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前にも記したように,現代の素粒子物理学や宇宙論について理解するのが難しいということに対して,第一線の第一人者という研究者から啓蒙書が書かれることはとてもありがたい。ただし,それが一般の読者にとってわかりやすく書かれているかどうかは,従来からはなはだ疑問なのである。研究内容を理解してもらうことと,研究することとは一致しないし,内容がもともと難しいのだから当然とも思う。それに対し,これもすでに紹介したように,その救世主とも言うべき大栗博司先生が,「重力とは何か」「強い力と弱い力」に続いて,今回まさに「大栗先生の超弦理論入門」と題して講談社ブルーバックス(物理学の啓蒙書の老舗)から出してくださった。
今まで読んだ,現代物理学の未解決の解説書にふれると,くりこみ,ゲージ対称性,ヤンミルズ理論,カラビ-ヤウ多様体,余剰次元などの文言が出てくるものの,それぞれ丁寧に解説したもの(カラビ-ヤウ多様体で一冊の本もあるが,余計分からない)を見たことがない。この本では,それぞれ研究史の流れに沿ってこれらの意味をかみ砕いて(分からないけれど)説明がある。すごいと思うのは,理論の中身を説明しても分からないに決まっていても,解決の糸口や意義を研究者のエピソードとともに,時にその困難さなども説明してくれることであろうか,そうだったんだ=「分かった」という面白みで読んでしまう。言ってみれば,分からないのだが,分からないほど難しいということが分かる。これは少なくとも一歩前進である。けっして読者を見放していない解説なのだ。
われわれのこの世界が,9次元のカラビ-ヤウ多様体に折りたたまれていなければならない理由も,分からないなりに説明してくれている。数学は,やはり面白い。空間が,我々の幻想に過ぎないという言い方も何となく納得できて,世界観がまた1つ変えられた快感を味わえました。
ブルーバックスとしても,創刊50周年をむかえ,その啓蒙書として価値を全面的に押し出していて,はじめて表紙タイトルを縦書き(日本語を意識して)にしたそうである(いままでの横書きの罫線がない)。大栗先生じきじきの刊行記念メッセージ動画もどうぞ。

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