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2015.10.03

海辺のカフカ

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 芸術鑑賞といえば,普段は美術館の展覧会ぐらいしかでかけない。以前NHKの歌謡コンサートの抽選に当たって森進一や和田アキ子を見に行ったとき以来になる。ホールとか劇場のチケットをわざわざ手に入れて,村上春樹原作,蜷川幸雄演出,宮沢りえ主演の演劇(舞台芸術)鑑賞にでかけた。場所はさいたま芸術劇場,これもはじめてのお出かけ場所,埼京線なんて滅多に乗らない。どういう風の吹き回しかというと,NHKのSWITCHというインタビュー番組で宮沢りえとリリー・フランキーの対談を見たのがきっかけである。演劇の宣伝というのはあまり見かけないが,これはちゃんと宣伝になっていたし,テレビの申し子みたいな宮沢りえがやけに役者魂みたいなのを披露(ロンドンやニューヨーク公演でも受けたことを自慢げに)していたので,その気になってしまった。
 もちろんテーマというか題目が「海辺のカフカ」というのも興味津々である。村上春樹に一時ハマルくらいの経験はあったし,1984(途中まで)やねじまき鳥クロニクルと海辺のカフカは読んでいたので。で,これらの小説が,映画や演劇にできるのかという漠然とした憶測もすぐに思い浮かんだ。話(ストーリー)が錯綜しますよね。さらに,幻想と現実がごちゃ混ぜになるみたいな小説で,読む分にはこちらの頭を夢見心地にすればなんとかなるけど,見たり演技するとなると意味不明のアングラ劇みたいになりはしないかという心配もでてきて,なんだかわくわくしてきて,カミさんも都民の日が休みだったのでネットでホリプロのメンバー登録してチケットをゲット。
 見てきた感想は,当たり前によかったです。いいもんですね,やはりライブというか生身の表現に触れるというのは。で,演出というか舞台装置がすごいわけ。演劇で,普通場面設定を変えるときは暗転して,舞台道具をゴソゴソかえて明るくなって,か,回り舞台ですかね。それを,移動できるアクリルのゲージが次々に動き回って出てくる仕掛けなのです(宮沢りえが小さな水槽みたいなのにしゃがみ込んで閉じこまっていたり)。これで,映画みたいにストーリーを進行できるわけで,おそらくほぼ小説通りのストーリー展開だったと思います。
 小説でも,突然ジョニーウォーカーやカーネルサンダースが出てきて面食らうのですが,なんでこのお芝居が想像したとおりのイメージなのか不思議なくらいです。ネコと会話したりする場面も,演劇だから違和感なく,読んだことがなくても充分物語に入っていけると思います。むしろ小説より分かりやすいのではと感じました。演劇というのは,登場人物がこちらに語りかけてくる感じに親近感というか,こちらも感応できる安心感があるもんです。人間のもつ毒や邪悪,を扱う場面に同道させてもらうよろこびというか,村上ワールドそのものを体感した気分でした。
 思うに,小説家で自殺に至る人が多いのは,まじめに人間を描こうとすると善と悪,天使と悪魔が出てきてしまい,自身の本性にさいなまれるためだろうと思い当たります。そういう意味ではファンタジー仕立てで,ものすごい悪を登場させて消化しないと,自死にいたる。村上春樹や高村薫やスティーブンキングの小説を読むと分かる気がします。今時の文学性に共感できたカタルシスでした。最後に森のなかに消えていくりえちゃんきれいかったです。


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