« 星見シーズン | Main | 2015カブリ賞受賞者一般講演会 »

2015.10.28

ブラタモリ富士山②または『富士山はなぜそこにあるのか』

 ブラタモリ富士山の第2回目について,ますます感動的だったといいたいところであるが,いくつか指摘しておきたくなった。それは「富士山はなぜ(どうして)そこにあるのか」という本がすでにあるという話。

 まず,私は不肖の学生であったが,母校東京都立大学理学部地理学科でお世話になった貝塚爽平先生の「富士山はなぜそこにあるのか」丸善出版(1990年)(再版,講談社学術文庫「富士山の自然史」2014年)の最終章から引用する。

『自然を読むということ(中略)狩猟採集時代はもちろん,農耕開拓時代の人間にとっても,自然をどれだけ読めるかは生死に関わる問題だったが,現代ではどうだろうか。いまも人は地上に住んでいるから,居住地を選んだり,都市計画を立てたりするに当たって,土地の自然を読めれば,洪水,山崩れ,地震などの自然災害を避けたり軽減したりすることができる。
 ところが,そういう土地自然の読み方は,私自身の学習と教育の経験では,たとえ写真やスライドをつかっても教室では習得しにくいものである。具体的自然,ことに地形や地質を読むには,どこを歩き,どこをみるべきかを含めて実地教育が必要なのである。しかし,いったん実地に即して多少とも自然の「ありざま」を知ってしまうと,不思議なぐらいその後の「読自然」能力は得やすく,読書によっても増やせるものである。実物と文字,実物のあり方と知的論理の対応がつくからであろうし,「読自然」のおもしろさが埋もれている人の能力を引きだしてくれるからだろう。
 こうして人が,自然を読むことの楽しさを覚えれば,風景の相当部分は植物と地形と天候で構成されているのだから,旅行や散歩の楽しみは倍増するというものである。そして,このように個人個人の自然史の理解と愛好が,社会的には地球上の自然や資源の保護,自然災害や公害の軽減の基盤ないし原動力となるのはいうまでもない。(後略)』(引用終わり)

 なんといっていいのか,ブラタモリの面白さや感動がわからない人には,これを読んでもらうしかない。実地に歩いて発見することがいかに楽しいのか,というブラタモリはおそらく貝塚先生も推奨したはずである。とにかくでかけるのが好き,多少とも自分で旅行の計画を立てたてて,その善し悪しを吟味したり,土地土地の中に同じと違いを見つけたことがある人には意味が分かるはずである。この本の存在を思い出し,読み返してみたらとっくの昔に大事なことが書いてあった。やはり貝塚先生にはかなわない。

 それと,2回目の最後に,富士山の美しさが,「私たちが今の富士山の姿に出会えた時期の奇跡」という話だったが,このことは,貝塚先生の直弟子である山崎晴雄さん(首都大学東京教授:私の先輩)が今年のNHKラジオ番組(カルチャーラジオ「富士山はどうしてそこにあるのか」2015年1月~3月NHKラジオ第2放送)でもっと端的に指摘されている。富士山の2900年前の山体崩壊とその後の活発な噴火活動が現在の美しい姿(化粧直し)をしているというだけでなく,世界でもまれなプレートの三重会合点(フィリピン海プレート,北米プレート,ユーラシアプレート)に位置することを,世界でも「不二の山」であると書いている。

 実は,山崎さんはタモリのもう一つの看板番組「タモリ倶楽部」(テレ朝)に活断層が専門ということで「三浦半島断層群を行く」という回(2012年11月前後編放送)に出演されている。この辺の話を続けるには長くなったのでとりあえずここまで。
61lx8opu3sl_sl500_sx352_bo120420320
512piv1exrl_sx350_bo1204203200_

« 星見シーズン | Main | 2015カブリ賞受賞者一般講演会 »

地学巡検」カテゴリの記事

地学教育」カテゴリの記事

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

Comments

Post a comment

(Not displayed with comment.)

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/18559/62567782

Listed below are links to weblogs that reference ブラタモリ富士山②または『富士山はなぜそこにあるのか』:

« 星見シーズン | Main | 2015カブリ賞受賞者一般講演会 »