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2017.01.19

骸骨考(養老孟司)のウソ学入門

 身体巡礼(ドイツ,オーストリア,チェコ)につづく養老先生のお墓訪問記の第2弾(イタリア,ポルトガル,フランス編)である。養老先生の出版物は古いものが多い中で,最近の連載をまとめたもので読むことができるシリーズである。西洋のお墓は,亡骸や骨で装飾されているって,知っている人は少ない。養老先生のまさに真骨頂本ですね。
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 面白かったのが,中ほど(三章)にある「ウソ学入門」。忠臣蔵の浅野内匠頭が菓子折を吉良上野介に送る。吉良は,菓子折の底を調べて二重底(小判入り)でないことを確かめて,浅野内匠頭の愚か者めが,と怒る。という場面について。一体これは,誰をどうだますつもりなのか。賄賂をごまかすにしても,見え見えで,形式とか記号にそうとうする例だという。で,そんなことも知らんのか,という世間知らずを強調するわけである。確かにその通りで,だますというのもいろいろ考えると奥が深い。ウソは,単にごまかす,だます,ためのものではないという話である。そのほか,本人がウソと思っていないSTAP細胞の場合とか,オレオレ詐欺は日本特有だとか(納得)。

 続けて,イエズス会(日本のキリスト教の元祖)の教会の天井絵がだまし絵になっていることにふれ,宗教や文化の役割を考える。日本の場合は,素直すぎてあまり言葉尻を気にしたりしないが,西洋では,ウソとは言えないでしょう,みたいなウソ(論理)を発明する必要がでるという。

 ウソではないけれど,従軍慰安婦の銅像にもふれていて,銅像はできるだけ作らない方が良いという。銅像というのは,作ってしまったが最後,容易に撤去できないものだというのが理由だが,確かに人の心が変わったとき,やっかいになるに違いない。こうやって,いろんな知識を総動員しても物事は単純ではないんだな-とか,ヨーロッパの歴史をもっと知りたいな-と,思わせてくれて,いつもながら有り難い一冊でした。


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