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2017.08.27

だましのテクニック

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 この間の直木賞をとった「月の満ち欠け」という小説を読んでみたのだけれど,正直なところあまり楽しめ(面白く)なかった。生まれ変わりとか前世の記憶とか,という話は興味があるから知っていたし,それをモチーフにしているのも前評判で聞いていたから,話に入っていけない,小説に没頭できない,いつの間にか本の世界に入り込んでしまうという,いつもの経験をせずに読み終わってしまった。ということだと思う。

 養老先生が言っているのを参考にすると,脳は現実より架空の物語の方を好むのだと思う。哲学とか思想とか科学とか大そうなものを考え出すが,どれもパズルあわせのように腑に落ちる(完成している)ものを好むから,にすぎないと思う。はっきり言って,政治経済や近頃のマスコミ報道なんかクソ面白くもない。養老先生はファンタジーをいっぱい読んでいる。ファンタジーなど子供だましだと言うなかれ,話立てやトリックが巧妙に組まれていて現実には不可能な整合性が見事に構築されているのである。このことは,ウソ学といって,養老先生の得意分野だ。

 ウソとかインチキに騙されるな,というが,われわれは巧妙に騙されるのつねに欲っしていると言って良い。お年寄りが,オレオレ詐欺に騙されるのも,息子を助けるという利他的行動をかなえてくれるからではないだろうか。

 この点,日本人はまじめすぎるらしい。西洋では,たとえば,アメリカの9.11同時テロすら,だれかの陰謀で,そもそも,ハイジャック機は自動操縦のはずだ,とかあんなビルにあてるのは不可能とか,なぜビルが崩壊するのかとか,いってこれらは仕組まれた芝居にすぎないと陰謀説が相当支持されているという。ウソが仕組んであるのが普通というキリスト教的性悪説なんだろう。したがって,だましのテクニックも相当なもので,オレオレ詐欺なんて低レベルの詐欺に遭う人はいないに違いない。さらに社会的にそういうレベルの高いウソを,そのようにしとかないと世の中まわらないでしょ?というスタンスで黙認する文化があるのだそうだ(養老孟司「考える読書」より)。

 小説を読んで,夢中になるのが面白いので,それには想定外の展開や,先の読めなさに引き込まれるといったことが必要で,その場合多少無理があっても読者が気がつかなければ不満はでない。映画も同様で,何回か見るうちに,そういった話の展開の矛盾に気がつくこともある。荒唐無稽ということだ。
 そうなってくると,逆に事実は小説より奇なり(事実の方がウソっぽい)となって,どこまで行ってもウソに惹かれるのが人間ということになる。

 要するに,初めから脳の中は虚構で成り立っているのだと言って良い。私でなく,養老さんとノア・ハラリ氏がそう言っている。


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