未来は過去からやってくる~思いがけず利他(中島岳志,ミシマ社)
Amazon何気なく注文して読んだのだが,とても面白く共感した一冊。著者中島さんは政治学者というが,心理学とか倫理学というかテレビや新聞などの評論でも人のこころの綾みたいなものに触れて,考えさせてくれる方だと思う。つい最近NHKのロングインタビューという番組でも,安部元総理暗殺の背景について,日本の今,世の中の分断について歴史をふまえて的確に伝えていたと思う。
利他的行動,と一口行っても難しい。情けは人のためらず,というのは自分のため。だとすれば,それは利己的ではないのか。という問いを続けていく。結論は,利他行動というより,よりよい生き方の問題になっていて,私たちは何かを得ようとして,それが得られるものではなく,思いがけず外からやってくる,いわば偶然によって導かれるように生きている,それが重要だという。私たちの存在自体がよく考えれば,偶然にすぎず,すでに多くの人(存在)からの恩恵(仏教でいう縁)で成り立っている。自分の選択といえども,過去に因縁があると考える。ことによって,世界を受け入れていく‥‥‥。うーんうまく言えない。ぜひ読んでみてください。過去のある時の選択や導きが今の自分を作っていると考えれば,自分も他に対して影響していて,自然に利他にかかわっているんだと,いう認識がもてて一つ気が楽になりました。
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