哲学・文学

2017.01.14

漱石のこと3

 NHKカルチャーラジオは,文学,歴史,科学など別になっていて,科学ではすでに山崎さん(先輩)も出演しているので,その後も地球科学の丸山茂徳さん,系外惑星の井田茂氏などが続いていた。で,ラジオだが今はインターネットでストリーミング配信されていることを知って,スマホで通勤電車の中などでまとめて聞くことができる。これは便利である。去年の暮れの文学分野で,「鴨長明の方丈記」も大変ためになった。

 さて,漱石と科学であるが,先ず坊っちゃんは,数学教師に設定されている。しかも,自分の嗜好を述べる台詞の中に「語学とか文学は真っ平御免」とある。当時文学で名をたてていた漱石のユーモアともとれるが,嫌な赤シャツを,きどった文学士にあてて,それは自分がモデルだと述懐したそうである。じつはこちらの方がユーモアであり,我が輩は猫であるの寒月,三四郎の野々宮さんなど,教え子で門下生の寺田寅彦をモデルにすると同時に,彼から得た当時の最先端の科学の知識が随所に出てくるし,科学に造詣が深くなければ書けない内容を盛り込んでいるのが漱石文学の特徴である。というわけだ。

 さらに,漱石の「文学論」そのものもが,英国留学中にであった池田菊苗(味の素の発明者)に触発された科学的な方法論に(あこがれて)よって書かれているのである。池田に会った後に,妻鏡子にあてた手紙の一説が有名で,「近頃は文学書は嫌になり候,科学上の書物を読み居候」とあり,文学論の中で,無理矢理「F+f」という数式で文学を要約しようと試みている。漱石は,とにかくあてにならないものが嫌いで,科学のようにすっきりとした説明が理想だったようなのである。言われてみると,我が輩の猫は何でも知っていて,ニュートンの力学の3法則を講釈したりしていたこと,人間の観察眼がまるで客観的,科学的(生物学的特徴からの分析というか)であるなど,読んだときにシンパシーを抱いていたことをおもいだした。そして,政治的な風刺なども鋭い,ということに改めて気づかされたところなのです。

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2017.01.12

漱石のこと2

 漱石のファンになったのは,高校の現国で「こころ」を読んだだけでなく,大学受験で浪人していたとき,ほとんど小説から小品まで読んだからだ。ちょうど岩波から何回目かの漱石全集が刊行中(1970年代中頃)で,父親が注文したため,家に次々に配本が届いていた(すでにほとんどそろっていた)。受験勉強するのがいやで,勉強よりこっちの方が人生のためになる,などと代償行為的に読んだのだった。

 我が輩は猫である,坊っちゃん,三四郎,あたりなら良いが,それから,門,行人などなんでこんなに暗い小説なのか,まったく受験生にとって悪影響しかないものにまで,ハマっていたのである。ただ,もっとも印象に残っているのは,漱石が朝日新聞社に入る直前に書かれた,二百十日や野分である。これくらい読んでいると,漱石の評論などを読んでも,よく分かるので,大学生の頃は江藤淳の「漱石とその時代」なども読んだ。最近でも,「漱石という生き方」や「草枕の那美と辛亥革命」なんていう本まで買って持っている。000069109442016_01_234_2
 没後,100年と言うことで,昨年NHK で作られた,ドラマ夏目漱石の妻もしっかり見た。シンゴジラの長谷川博己と尾野真千子(かくれファン)が演じていて,とても良かった。宮沢りえと豊川悦司のヤツは見なかったが。それから,NHKラジオのカルチャーラジオ「科学と人間」で,「漱石,近代科学と出会う」,は漱石が間違いなく理系に属する人間であることを示してくれる番組だった。これについては,次にしよう。
 
 生意気と思われるだろうが,知らない人が多いと思うので言っておくが,「野分」という小説,これはなんと社会主義を標榜しているのである。だから,その前に書かれた坊っちゃんが風刺小説だというのは実に鋭い指摘だと感心するのである。

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